地方や知名度の低い会社で働いていると、「いい仕事をしているのに、なかなか知ってもらえない」「次の案件がいつ来るか不安」と感じること、ありませんか?
地方ベンチャーは、県内では知られていても全国的な知名度は圧倒的に低いことがほとんどです。だからこそ「待ち」の姿勢でいると、仕事はどんどん途切れていきます。
この記事では、地元の地方ベンチャーでCTOを務めてきた私が、成長するために実践してきた4つのこと——発信・関係づくり・補助金の活用、そしてそれらを「仕組み化」して回す工夫——を、できるだけ正直にお伝えします。地方や少人数の会社で奮闘している方の参考になれば嬉しいです。なお、地方でエンジニアとして働くこと自体については地方でエンジニアは厳しい?地方ベンチャーでCTOになった私の結論にまとめています。
地方ベンチャーが成長するために私がやってきたことは、大きく4つあります。前半2つは攻め——発信と関係づくりで、知ってもらい・相談される会社になること。後半2つは守り——補助金と情報収集の仕組み化で、会社を続けられる足場を固めること。どれも個人の頑張りに頼らず仕組みで回すのがコツです。順番に見ていきましょう。
目次
① 発信して、知名度を上げる【攻め】
知名度が低いなら、自分たちから発信して知ってもらうしかありません。名前と「何をやっている会社・人なのか」を覚えてもらえれば、そこから問い合わせ・紹介・採用につながり、結果として仕事が途切れにくくなります。私がやってきた中で効果を感じた順に、3つ紹介します。
① 登壇する(いちばん効く)
一番おすすめなのが、LTや勉強会で登壇することです。人前で発表するとなると、「自分が何を伝えたいのか」を整理し、言語化して原稿に落とす必要があります。この言語化する力は、エンジニアの仕事そのものにも効いてくる一生もののスキルです。
そして、人前に立つこと自体に価値があります。登壇すると目立つので、その場にいた人に覚えてもらえ、自然と知り合いが増えていきます。さらに、登壇した様子をSNSで発信すれば、イベントに参加していない人にも届き、フォロワーになってくれることもあります。「話す → 発信する」の合わせ技で、認知は何倍にも広がります。最初は緊張しますが、積極的にチャレンジする価値は十分にあります。
「登壇なんてハードルが高い」と思うかもしれませんが、最初は5分のLT(ライトニングトーク)で十分です。機会は、connpassなどで募集されている勉強会や、地域のITコミュニティ、オンラインのLT会などで見つかります。小さく始めて場数を踏めば、自然と慣れていきます。
② 共同勉強会を企画する
次におすすめなのが、知り合いの会社に声をかけて共同で勉強会を企画することです。私も「インフラやデータベースについて、何社かで持ち寄って話しませんか?」と声をかけ、共同勉強会をたびたび開いてきました。
他社の事例や考え方を共有できるのはもちろん、参加したエンジニア同士が知り合いになり、その後も関係が続いていくのが大きな価値です。こうしたつながりは、後述する「仕事の相談が入ってくる状態」づくりにも直結します。一度きりで終わらせず、継続的に開くのがポイントです。
③ テックブログを運用する
会社としての発信なら、テックブログも有効です。私の会社でも技術発信用のドメインを用意し、各エンジニアが学んだことや気づいたことを記事にし、社内チェックを経て公開する、という制度を作りました。会社の技術力を外に示せますし、書く本人の学びの整理にもなります。
発信は「導線」までセットにする
そして、意外と忘れがちで大事なのが導線(CTA)です。登壇スライドの最後やブログ記事の末尾に、「どんな会社・どんな人なのか」「こんなことで相談に乗れます」という案内と、問い合わせ先やサービスページへのリンクを必ず置いておきましょう。
発信を見て「いいな」と思ってくれた人がいても、次に進む先がなければ、そのまま流れて終わってしまいます。逆に、相談や問い合わせへの動線が用意されていれば、認知がそのまま仕事の入口に変わります。「発信して終わり」にせず、受け皿までワンセットで設計するのがポイントです。
受け皿になる「自社サイト・取材記事」を整える
発信で興味を持った人——お客さんも、採用候補も——が次に見るのが、自社サイト(ホームページ)や取材記事です。実際、お客さんはここをしっかり見ています。だからこそ、ホームページは力を入れる価値があります。
ポイントは、「おしゃれ・かっこいい」よりも分かりやすさです。どんな会社で、どんな領域の、どんなサービス・商品を扱っているのか。そしてどんな課題を解決できるのかを、事例も交えて伝わるようにしておきましょう。
小さな会社やベンチャーは、つい自社サイトを後回しにしがちです。だからこそ差がつきます。おすすめは、デザイン(自分たちのイメージ)にはしっかり力を入れて固め、実装や運用はAIで効率化する、という切り分け。ここでも「力を入れるところ」と「仕組みで楽をするところ」を分けるのがコツです。
発信は、特に「採用」に効く
実際、こうした発信は採用で大きな効果を感じています。登壇やテックブログを見て応募が来たこともありますし、私の仕事観やキャリアをインタビューしてもらった記事をきっかけに、応募につながったこともありました。
さらに、社外活動として運営しているプログラミングスクールのYouTube動画を見て、まったく縁もゆかりもない土地から興味を持って応募してくれた人もいます。地方は採用が難しいと言われますが、発信は知名度だけでなく「一緒に働きたい人」まで引き寄せてくれる——これは実体験として強く感じているところです。人が増えれば、会社はさらに成長していけます。
「やれ」では続かない。仕組みで回す
ここが、発信でいちばん大事なポイントです。登壇もブログも、ただ「やろう」と号令をかけるだけでは続きません。みんな忙しいので、結局モチベーションの高い一部の人しか動かないのが現実です。
だからこそ、個人の頑張りに頼るのではなく、制度や仕組みに組み込んで、自動的にサイクルが回るように設計するのがCTO・マネジメント側の役割です。具体的には、こんな打ち手があります。
- 評価やインセンティブに紐づける(発信を手当や評価項目に含める)
- 持ち回り制にする(書く人・登壇する人が偏らないようにする)
- 定期的に予定を登録して習慣化する(「この時期はこれをやる」と先に決めておく)
正直に言うと、私の会社でも執筆インセンティブを用意してみたものの、習慣として根づかせるのはなかなか難しく、今も試行錯誤の途中です。今後は、AIを使って各自の知見をまとめ、アウトプットの手間そのものを下げる仕組み化に挑戦したいと考えています。発信は「気合い」ではなく「設計」で続ける、という意識が大切です。
② 関係値をつくり、相談が入る状態にする【攻め】
発信と並んで——いえ、地方で着実に成長していくうえではこちらが本丸かもしれません。人との関係値づくりです。地方では、仕事の多くが取引先や知り合い、紹介から生まれます。新規の派手な営業よりも、既存の関係を切らさないことのほうが、ずっと効いてきます。
とはいえ「信頼を積み重ねる」だけでは抽象的なので、私が意識してきた具体的な動きを挙げます。
- 用がなくても定期的に接触する:既存顧客や取引先に、近況や役立つ情報を送って「思い出してもらう」
- 納品して終わりにしない:その後の使い心地をフォローすると、次の相談につながりやすい
- 小さな相談にも丁寧に乗る:「困ったら、まずあの人に聞こう」と思われる存在になる
- 「誰に何を頼めるか」を発信しておく:自分の得意分野が伝わっていると、紹介が生まれやすい
派手さはありませんが、こうした積み重ねが「依頼や相談が途切れず入ってくる状態」を作ります。これこそが、地方で安定して成長していくための一番の土台です。逆にここが弱いと、技術力があっても財政的に苦しくなりがち。さらに、信頼できるつながりはリファラル(紹介)採用にもつながり、仕事だけでなく「いい人材」まで連れてきてくれます。先ほどの登壇や共同勉強会も、この関係値づくりの入口になります。
③ 補助金・助成金で経営の足場を固める【守り】
ここからは“守り”——攻めで取ってきた仕事を、利益と会社の存続につなげる土台づくりの話です。その代表が補助金・助成金。地方ならではの武器で、意外と多くの制度があり、知っているかどうかで会社の動きやすさが大きく変わります。私が実際に活用を検討・利用してきたものには、例えば次のような種類があります。
- 研修・人材育成系:従業員の研修費用の一部が補助される制度。負担が大きく軽くなることがあります
- 採用系:ハローワークなどを通じた採用で、助成金や負担軽減につながる制度
- オフィス・設備系:事業所の家賃や設備に対する補助
ただし、補助率・対象・名称は年度や自治体によって大きく変わります。金額や条件はここでは断定できないので、必ず最新の一次情報を確認してください。具体的には、家賃・設備系なら市区町村や商工会議所、研修・採用系の雇用関係助成金ならハローワークや労働局に相談するのが近道です。日頃から窓口に顔を出し、知り合いを作っておくと、有益な情報が向こうから入ってくることもあります。
注意点として、補助金は申請手続きがやや大変です。さらに、採択後も報告や管理が必要だったり、「こんな制度が使えたのに気づかなかった」と取りこぼしたりしがちです。使えそうな制度はリスト化しておき、忘れないように記録しておくことをおすすめします。
④ 情報収集をAIで仕組み化する【守り】
補助金にしても発信のネタにしても、結局は「いかに必要な情報を取りこぼさず集めるか」が勝負です。とはいえ、補助金の公募や業界の最新情報を毎日手で追いかけるのは、現実的ではありません。
そこでおすすめなのが、情報収集そのものをAIで仕組み化してしまうことです。例えば、自社の事業内容や狙っている領域をAIに学習・設定しておき、関連する補助金やネット上の情報を自動で集めて自分に届くようにする。具体的には、補助金ポータルや自治体サイト、業界ニュースを定期的にAIにチェック・要約させ、結果をSlackやメールに流すイメージです。最近はChatGPTやClaudeのカスタム機能を使えば、こうした仕組みも個人で作りやすくなっています。
例えば、こんなプロンプトを土台にして、AIに“自社専属のリサーチ担当”になってもらいます。
あなたは私の会社の補助金リサーチ担当です。
# 会社情報
・事業内容:ソフトウェア開発(Webアプリの受託・自社開発)
・所在地:◯◯県◯◯市
・従業員:10名(エンジニア中心)
・関心テーマ:人材育成(研修)、採用、オフィス・設備
# お願い
・上記に関連する補助金・助成金を、国/自治体/商工会議所の制度から探してください
・各制度を「制度名/対象/補助率・上限/申請期限/一次情報のURL」の表にまとめてください
・申請期限が近い順に並べてください
・情報が不確かな場合は「要確認」と明記し、断定しないでくださいあとは、これをChatGPTやClaudeの「カスタム指示/プロジェクト機能」に登録し、月に一度など定期的に実行するだけ。最新の公募情報が、いつも同じフォーマットで手元に届くようになります。もちろん最後は一次情報での裏取りが必要ですが、「探す」手間が劇的に減ります。一度作っておけば、人手をかけずに機会を逃さずに済みます。
こういう「面倒なことは仕組みで楽をする」という発想ができるのは、まさにエンジニアの強みです。発信の習慣化も、補助金の情報収集も、根っこは同じ。人の頑張りに頼らず、仕組みで回す——この一点に尽きると思います。
まとめ:成長し続ける鍵は「仕組み」
地方や無名の会社でも、しっかり成長していくことは十分に可能です。大切なのは、次の4つを「待ち」ではなく「仕組み」で回すことでした。
- ① 発信【攻め】:登壇を軸に、共同勉強会・テックブログで知名度を上げる(導線CTA・習慣化の仕組みもセット)
- ② 関係値【攻め】:相談・依頼が常に入ってくる状態をつくる(本丸)
- ③ 補助金【守り】:補助金・助成金で経営の足場を固める
- ④ 情報収集【守り】:AIで仕組み化し、補助金も発信ネタも取りこぼさない
派手な数字をうたえるわけではありませんが、この4つを続けてきた手応えは確かにあります。知り合いの会社から案件を紹介してもらえたり、自社プロダクトの利用や機能拡張についての相談が増えたり。そして前述のとおり、発信は採用にもつながりました。仕事も人も、少しずつ「向こうから来る」状態に近づいていく——これが、仕組みで回すことの手応えだと感じています。
どれも、個人の頑張りに依存させず仕組みとして設計するのがポイントです。気合いではなく仕組みで回す——それができれば、地方でも会社はしっかり前に進んでいけます。
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